BOOK212

COLMUN

ピンクのカラス

THE PINK CROW HAVE AN INTERVIEW WITH CREATORS.

ボクがボクになるまで。
『ピンクのカラス』、誕生物語。

ボクは、カラス。
『ピンクのカラス』を創った人たちに
ずっと聞いてみたかったんだ。
「どんなふうに、ボクは生まれたの?」

ストーリーを作ってくれた ちとせさん / ②画を描いてくれた かほりさん / ③アイデアをくれた まひろ / ④デザインをしてくれた りこさん / ⑤展覧会のディレクションをしてくれた しほさん

CHITOSE

WITH CHITOSE

ボクから、ストーリーを作ってくれた「ちとせさん」へ。

ボクが色を旅するストーリー、あっという間にできあがったよね。正直、びっくりするくらいに。
そして、ボクは、ちとせさんと一緒にたくさんの経験をして、迷って傷ついて、
どんどん強くたくましくなった気がしてる。
ボクにとって、ちとせさんはいつもそばにいる四つ葉のクローバーのようだよ。

「カラスの羽がピンクだったら、愛されるのにね」。この言葉を聞いたとき、どう思った?
キミはカラス、羽が黒なのは、当たり前。だから、もし黒じゃなかったら? と
考える人がいるなんて、とても驚いたよ。ただ、ピンクのキミを想像してみたら、
不思議なことに、キミに愛着が湧いた。キミだけでなく、
苦手だったはずのカラスの仲間たち、鳥の仲間たち、動物の仲間たちが皆、
愛おしく思えてきたんだよね。私はもう、キミの目をまっすぐに見つめられるよ。
ボクはピンクだけでなく、いろいろな色に塗ってみたよね。どうして、そうしようと思ったの?
「ピンクはかわいい」「黄色ははなやか」「青はさわやか」「赤はあでやか」
「白はうつくしい」「虹色はきらびやか」......。どれも、魅力的で羨ましいよね?
自分もそうならいいのに、と。私自身がずっと、自分にないすべての色に憧れるという感情を
奥に抱えていたから、キミにその感情を投影してみたんだよね。
代わりにチャレンジしてもらうことで、自分を見つめたかったのかもしれないな。
ボクは、たくさんの色を体験したあと、「もう、どうにでもなれ!」という気持ちで
虹色にチャレンジした。すると、案の定、頭の中が混乱したんだけど、ふとした瞬間に
光が差し込んで、それまでが嘘のように、軽やかに、伸びやかになったんだ。
不思議な感覚だったよ。
キミの目が、すべてを語り出していたよね。何色に塗っても、それがどんなに鮮やかな色でも
どこか居心地が悪かったから、すべてを手放したとき、あんなにもピュアな瞳になったんだと思う。
迷ったり止まったり、つまずいたりこけたり、思い通りにいかないのがきっと「生きる」ってこと。
そうして自分の力で探し求めて辿り着いた自分の色は、
輝きに溢れてる! ってキミに教えてもらったよ。
『ピンクのカラス』ができあがった今、どんな気持ち?
キミに託したメッセージが、重みや深みを増して、また自分に届いた気がしてるんだ。
自分でいい、自分がいい、生きていると、そう信じられないこともあると思うけれど、そんなとき、
キミがぽんと肩を叩いてくれる気がするよ。子供も大人も、男性も女性も、
日本だけじゃなくて、世界中の人に、キミのメッセージが届いたらいいなあ、と思ってる。
夢は大きく。それもキミが教えてくれたこと。
最後、飛び立つボクに、ひと言。
いろいろな景色を見て、たくさん笑って、たくさん泣いて、たまにはここに戻ってきて!
キミが黒に磨きをかけて、どんどん素敵になっていくのを、私はずっと見守っているよ。
KAHORI

WITH KAHORI

ボクから画を描いてくれた「かほりさん」へ。

かほりさんがボクを描いてくれるほどに、自分の性格がわかっていったし、今、振り返ってみると、
次第に、成長できた気がする。かほりさんは、まるで蝶々のようにふわふわと舞っていて、
一緒に旅をしているようで、ずっとずっと楽しかったよ。

絵本を一緒に創りたい、ボクの画を描いてほしい、とちとせさんに言われたとき、どう思った?
正直、とても驚きました。ここ最近、鳥も動物も描いていなかったから。
だから全然自信がなかったし、なぜ私? とも思ったけど、尋ねられる前から、
答えは YES に決まっていた感じがします。
最初にできたボクはどれだった? そのときの正直な気持ちを聞かせて。
最初に生まれたのは、表紙になったキミ。ピンク。じつは、この絵を描いたときのことを
ほとんど覚えてなくて、気がついたらキミがそこにいた、という感じ。
本当に私が描いたかな? って今も思う。
いろいろな色のボク、どの色がいちばん難しかった? それはなぜ?
迷わず、黒。笑。きっと誰もが、自分らしくいる、ということがとても難しいから
描くのも難しいんだって思いました。
ボクを描くにあたって、「壁」はあった? それはどんな壁?
いつだって、うまく描こうという思いが壁になる。ヨコシマとも言えるその気持ちは、
勇気とひらめきを奪っていくんです。
ボクを描くときに、かほりさんがいちばんこだわったことって?
好奇心いっぱいの瞳。
最初のボクと最後のボクでは、同じ黒でもまったく違うよね? 描くうえで、工夫したことは?
最後のキミは、自分の魅力に気づいたから、羽がツヤツヤと生きている。
光を反射していろんな色に輝いている。
どこまでも飛んでいくだろうからスピード感も意識しました。
できあがっていくにつれ、ボクは嬉しくて、踊り出しそうだったよ。かほりさんはどうだった?
はははは〜、踊り出すキミを押さえながら、解決していない問題点に取り組んでいて、、
いまだにできあがってはいない気分です。
、、ということは、まだまだ続きがあるんだね。
完成した『ピンクのカラス』、かほりさんにとって、どんなもの?
まだよくわからない、のが正直な気持ち。世の中に出ていって
本当に大丈夫かな、っていう不安の方が、今は強いかな。
MAHIRO

WITH MAHIRO

ボクから、アイディアをくれた「まひろ」へ。

まひろのひと言がなかったら、ボクは絵本になることはなかった。生まれる前からボクを好きでいてくれて、
旅のきっかけをくれたこと、感謝しているよ。
じつは、絵本の中で、最後に飛び立つボクは、まひろとどこか似ているんじゃないかと思っているんだ。

「カラスの羽がピンクだったら、愛されるのにね」。なぜそう思ったの?
キミの目って丸くて黒くてきらきらしてて、可愛いんだよね。それなのに、羽もくちばしも足も、
全身が黒というだけで、人間は目をそらすから、キミの目がどんな目か知らないと思ったんだ。
もし羽がピンクだったら、この目をまっすぐ見てくれる、もっとキミを知りたくなる、って。
ところで、キミは人間をどう思ってるの?
なぜ避けるのかな? って。だから、ときには人間に意地悪をしたくなるときもあったんだ。
そんなとき、羽がピンクだったら? と言われて、心が躍った。
ボクがいろいろな色に塗ってみるのを傍目で見て、どう思ってた?
キミは賢いから、もしかしたら建築現場や工事現場にあるペンキを見つけて、
本当に塗っちゃうんじゃないかとどきどきしていたよ。同時に、ずしっと心に響くものがあった。
キミを知って「おとなの絵本」「おとなも絵本」と思ったんだ。
たくましくなったボクは、誰にどんなメッセージを届けたらいいかな?
キミはキミのまま、ただ、そこにいれば、感じる人は感じてくれるんじゃないかな?
感じ方は、人それぞれ違うと思うけれど、だから面白い。
それだけで、キミが生まれてきた意味や価値があると思うよ。
RICO

WITH RICO

ボクから、デザインをしてくれた「りこさん」へ。

もし、ちとせさんとかほりさんが生みの親だとしたら、りこさんは育ての親だよね。
ボクが迷ったりつまずいたりするたび、思わずはっとするヒントをくれた。
絵本の中の蟻のように、ボクのことをずっと支えてくれた気がするよ。

ボクのストーリーと絵をデザインしてほしいと言われたとき、どう思った?
ちとせさんに物語を聞いてわくわくして、かほりさんの絵を見てびっくりして。
ずっと前から絵本にチャレンジしてみたいという気持ちがあったから、すごく嬉しかったよ。
デザインが完成するまでに、ボクの性格はどう変わったかな?
最初は、キミが綺麗すぎて、「心」が見えなかったんだよね。
でも、何度も何度も皆で模索することで、キミのピュアな瞳はベースにありつつも、
その奥にある心の機微が掘り起こされていった気がするよ。キミの性格が変わったんじゃなくて、
感情の奥行きが増したのかもしれないね。
最後のページでボクが飛び立つとき、どう思った?
このページのキミ、私はすごく好きなんだ。だから、もともとかほりさんはキミを
もっと小さく配置するつもりだったみたいだけど、あえて大きくしたんだよね。
左の羽の伸びやかさとか、足の動きの可愛らしさとか……、チャーミングなキミが未来を向いて、
自分らしく羽ばたこうとしている気がして。今では、キミのストーリーを自分に重ね合わせているよ。
SHIHO

WITH SHIHO

ボクから、展覧会をディレクションしてくれた「しほさん」へ。

しほさんは、ボクというカラスが生まれて、絵本の中で育つのを見守ってくれたね。
さらなる未来に羽ばたかせてくれる気がして嬉しいよ。
飛び立つとき、一緒にいてくれたてんとう虫みたい。

「ちとせさん」と「かほりさん」がタッグを組んたボクのストーリーに触れたとき、どう思った?
カラスくんのことは、ずーっと知っていたよ。
カラスくんは私に似てると思ってるからかもな〜。
ボクが飛び立てるかどうか、不安になったことはあったかな? それとも?
不安になったことは一度もないよ。黒がいいんだ! と思ったカラスくんは、
これからもカラスでいいの? とか魚になれる? とか また旅は続くと思うけど、
きっとずーっと続くから安心してる。
ボクはまさに今、絵本からさらに広い世界へ飛び立とうとしてる。
しほさん、ボクはどこを目指して飛べばいい?
ピンクになれば! と思った本当の意味を知るのはまだまだずーっと先かもしれないよ。
ピンクでもいいんだ! という日がくるかもしれない。
旅先はいつもカラスくん自身にあるのかもしれないね。
私はいつも、「そっか〜」と何かに気づいたとき、自分自身の旅に気づく。
忘れるけどまた気づく。私、カラスくんに似てる気がする。